ここネット 日本子ども・子育て支援センター連絡協議会

お知らせ

ここネット通信 1月号

2025年1月7日

こどもの生涯の幸せを育てる

ここネット理事  廣瀬集一

 

山梨県甲府市議会では令和6年12月、子育てについてこんな議論が交わされていますので、ご紹介させていただきます。

 

こどもの育てられる権利の話を進める中で、「はじめの100か月の育ちビジョン」の妊娠から小学校1年までのライフステージに従って質問を進めさせていただきます。

子どもの権利条約は1989年(平成元年)11月(20日)国連総会で採択されました。
日本は、1990年(平成2年)9月(21日)世界で109番目の国として署名、1994年158番目の批准・締約国となりました。現在は、締約国・地域は196となっています。

「こども家庭庁」は、こども政策の新たな推進体制に関する基本方針(令和3年12月21日閣議決定)に基づいて、令和5年4月に設置されました。こども家庭庁の創設は、大人が中心になって作ってきた社会を「こどもまんなか」社会へと創り変えていくための司令塔の役割を持つこととなりました。

「こども基本法」は令和5年4月に発効され、日本国憲法及び子どもの権利条約の「こどもの意見の尊重」など4つの基本原則を取り入れ積極的に推進することを規定しています。基本法のひらがな表記「こども」とは、18歳や20歳といった年齢で区切るのではなく、全ての子どもに必要なサポートが途切れないよう、「心と身体(からだ)の発達過程にある者」を表現しています。

「こども大綱」は少子化社会対策/子ども若者育成支援/子どもの貧困対策の既存の3-法律の白書・大綱を一体的に束ね、こども施策に関する基本的な方針や重要事項等を一元的に定めています。

そして、「こどもまんなか実行計画2024」には、ライフステージ別の重要事項として、「はじめの100か月の育ちビジョン」がとりあげられています。

このビジョンによる「はじめの100か月は生涯の幸せを育てる」という言葉に、子育ちの原点が集約されているように思われます。妊娠期から小学校1年生までがだいたい100か月。この時期に、こどもは様々な人やモノ、環境とのはじめての出会いを繰り返しながら育っていきます。こどもは、おとなのとの「アタッチメント(愛着)」すなわち「安心」を土台として、「遊びと体験」すなわち「挑戦」を繰り返しながら成長していきます。だからこそ、私たちはこどもが人生の第一歩を力強く踏み出せるよう社会全体で支え、応援していくことが必要だとしています。こどもがまんなかの社会を実現することは、すべての人の幸せ(ウェルビーイング)にもつながっていきます。

こどもの成長に応じた環境の変化には様々な育ちの危機が訪れるので、育ちの「切れ目」を生まないように「こどもの誕生前」から全ての関係者で連携して育ちを支えることが重要となります。

ここではこどもの成長に沿いながら議論を進めていきたいと思います。

 

質問1.誕生前の妊娠期です。

2024年の改正児童福祉法により「妊産婦等生活援助事業」が始まり、妊娠期から産後にかけて住まいや食事の提供、養育を支える拠点の整備を全国で進めています。支援施設では予期せぬ妊娠や出産などに悩み、住む場所がなく支援が必要な妊産婦を市町村などを通じて受け入れているとのことですが、甲府市は「妊産婦等生活援助事業」をどのように進め、また支援施設とどのような連携を取りながら、「特定妊婦」の伴走型支援を行っていくのか、お尋ねします。

 

質問2. 新生児 先天性代謝異常等 検査についてお伺いします。

山梨県は本年11月生後間もない全ての新生児から採血し、希少疾患の有無を調べる「新生児 先天性代謝異常等 検査」で、新たに20疾患から二つの疾患を対象に加え22疾患とすることを発表しました。課題は、「精度保証」「追跡調査」「倫理的課題」などが挙げられています。この検査により疾患が発見された新生児やその保護者に対し、甲府市としてどのようなサポートをされているのか、お聞かせください。

 

質問3.生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問する、「乳児家庭全戸訪問事業」(こんにちは赤ちゃん事業)についてお伺いします。

様々な不安や悩みを聞き、子育て支援に関する情報提供等を行うとともに、親子の心身の状況や養育環境等の把握や助言を行い、支援が必要な家庭に対しては適切なサービスを提供し、乳児のいる家庭と地域社会を繋ぐ最初の機会とすることにより、乳児家庭の孤立化を防ぎ、乳児の健全な育成環境を図るとしています。

甲府市における訪問者の職種と担当エリアと担当する概略人数及び令和5年度の訪問実績をお尋ねいたします。また、支援が必要な家庭へのサービス提供状況をお訊ねします。

(再質問)乳児家庭全戸訪問事業の要項では、訪問者について保健師、助産師、看護

師のほか、保育士、母子保健推進員、愛育班員、児童委員、母親クラブ、子育て経験

者等から幅広く人材を発掘できるとされており、その他として甲府の地域子育て資源

である子育て支援センター職員、その他子育て施設(保育所、認定こども園等)職員等

の参加を求め、地域担当の保健師さんの負担を軽減していくとともに、手厚い支援を

実現することにより、家庭と地域を繋げていく力強い事業となっていくのではないかと

考えます。地域の様々な関係者と協働しながら、子育て家庭と地域の資源を結びつけることを提案しますが、あらためて甲府市の実施体制を伺います。

 

質問4. 0歳6か月から満3歳未満児を対象に、今年度から「こども誰でも通園制度」の試行的事業が、甲府市ではじまりました。

改正児童福祉法の「乳児等通園支援事業」に基づいた「子ども・子育て支援法」等の改正による制度です。一時預り事業と大変似通っていますが、一時預り事業は保護者の都合で育児が出来ないとき利用できますが、こども誰でも通園制度はこどもの育てられる権利として事業化されたものです。

全国では118自治体が実施をしており、山梨県では甲府市が事業を開始しました。甲府市における実施施設数と試行的に実施を開始するにあたり、どのような課題があったのかお尋ねします。また本年度の試行事業の結果をどのようにまとめ、令和7年度の2年目の試行事業に繋げていくのか。さらに令和8年度の本格的実施に向け制度設計はどのようになるのかお尋ねします。

(留意点) 令和7年度からは「地域子ども・子育て支援事業」として実施するため、自治体で条例改正を行い、施設では認可手続きと定款変更が必要となる。

 

質問5&6. 集団健康診査(集団健診)について2点お尋ねします。

甲府市の集団健診には、3か月児整形外科健診、1歳6か月健診、2歳児歯科健診、3歳児健診、そして国民健康保険加入者の4・5歳児童対象の歯科健診、就学時健診があります。

一方、令和5年12月国会で、「母子保健医療対策総合支援事業」に関する補正予算が可決され、その中に「5歳児健診」の創設が含まれました。

令和5年12月8日付で各自治体宛にこども家庭庁成育局から「通知」が発出され、実施要項や必要な健康診査問診票についても「事務連絡」として送付されています。

2024年3月には、「5歳児健康診査マニュアル」が作成されています。5歳という年齢は、言語理解や社会性が発達する時期であり、発達障害が顕在化しやすい時期といえます。この時期に健診を行うことで、子どもたちの特性を早期に発見し、適切な支援に繋げることが可能です。「母子保健医療対策総合支援事業」に関する中の「5歳児健診」について、国は2028年度までに全国どこでも受けられる体制を目指していますが、甲府市の今後の実施についての対応を伺います。

 

質問7. 幼児教育/小学校教育の接続について(幼保小の架け橋プログラムについて)お尋ねします。

幼児期は遊びを通して小学校以降の学習の基盤となる芽生えを培う時期であり、小学校においてはその芽生えをさらに伸ばしていくことが必要とされています。

一方、幼児教育と小学校教育は、他の学校段階間の接続に比してさまざまな違いを有しており、円滑な接続を図ることは容易でないため、5歳児から小学校1年生の2年間を「架け橋期」と称して焦点を当てています。この為に、幼稚園、保育所、認定こども園、小学校が意識的に協働して「架け橋期」の教育を充実させるために、幼児教育施設では「主体的・対話的で深い学び」に向けた資質・能力を育み、小学校においては「幼児教育施設で育まれた資質・能力」を踏まえて教育活動を実施することとしています。このために、幼児教育施設では「アプローチカリキュラム」を、小学校では「スタートカリキュラム」を策定し、「架け橋期のカリキュラム」の作成を推進しています。

甲府市らしさを取り入れた「架け橋期のカリキュラム」を作成することにより、子どもたちにとって幼児教育と小学校教育は円滑に接続されていくのではないかと推測できます。甲府らしさを教育に取り入れるためにも教育委員会/教育部主宰のもとに架け橋期のプログラムについて話し合う会議を設置して、「幼保小の架け橋プログラム」を推進することを提案しますが、どのように対応されるのかお尋ねいたします。(答弁: 今後におきましては、国や県の指導・助言等をもとに、本市教育委員会と関係部署とが連携し、幼稚園や保育所、小学校、保護者、地域住民等による当該プログラムについて話し合う会議を設置する中で、架け橋期のカリキュラムの作成に向け、取組を進めてまいります)

 

質問8. 甲府市こども家庭センターについてお尋ねします。

2022年に改正された児童福祉法に基づき、2024年度から新しいこども福祉の拠点「こども家庭センター」が全国の市町村に努力義務ですが設置されつつあります。甲府市においてはいち早く「子ども・青少年総合相談センターおひさま(子ども家庭総合支援拠点)」が担う児童福祉機能と、「子育て世代包括支援センター」が担う母子保健機能が連携した、全ての妊産婦、子育て世帯、こどもに対し一体的に相談支援を行う機関として今年度4月より運用が開始されました。あらためて「こども家庭センター」の役割や機能、支援体制、他団体との連携などについて、お訊ねをいたします

以上、8点ライフステージに沿って、こどもの育ちについての質問をいたしました。

(議会の質問と答弁についての詳細は、甲府市議会HPをご覧ください。)

 

 



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